「臨也ってさぁ、エロいのに性格がそれだから台無しだよね。」
「ねぇ新羅、それ一つも褒めてないってわかってる?」
「え?エロいは褒め言葉でしょ?」
「欲望の権化かい君は。」
「んー、この状況だと否定は出来ないなぁ。」
くすくす。殺した笑い声で俺達の頭は一杯になる。教室の床の上に仰向けに寝そべった俺とその上に覆い被さる新羅。そのなよっちい指先がカッターシャツのボタンを一つ一つ外していくのが可笑しくて堪らない。
「新羅ー、今何考えてんのー。」
「君が美味しそうだなって。」
「きゃー食人鬼。二大欲求を同時に満たそうなんて強欲な。」
「ついでに今日君が家に泊まりに来てくれたらオールクリアなんだけど。」
「プリンがあるならいいよ。」
「決まりだね。」
温かい手だ。インナーをたくしあげながら新羅が笑いかけてくる。
「臨也こそ、何考えてんのさ。」
「増加し続ける世界のエントロピーと愛の相乗効果について。」
「医者になったら君の頭から治してあげるね。」
「残念、手遅れだよ。」
わいちゃってる。手を伸ばして眼鏡を奪った。
「こんなの掛けてるから世界が屈曲して見えるんだ。」
「掛けないと君しか見えないんだけど。」
「俺以外に見たいものでもあるの?」
「僕らの子供とか、」
「いくら俺が素敵で無敵でも不可能はあるんだよ。」
「大胆不敵なくせにこんな時だけ逃げ腰なんだ?」
「うん、だから優しくしてね。」
「私、実は狼なんだ。」
臍のあたりから舌が上ってくる。いつのまにやらベルトは床に投げ出されていた。器用だなぁと関心しつつ頭の芯に集まり出した熱に呑まれないようにぐっと息を詰める。
「ね、声出してよ。」
生っ白い内腿を撫でられて喉が鳴る。靴下だけ残すなんてマニアックな。新羅の目に熱を感じる。笑い声は小さな喘ぎに変わった。
「新、羅ァ、」
「あ、ゴム付けるから待って。」
「情緒が、ないね、君ってやつは、」
「情緒があったって残るものは同じさ。」
わざわざ見せつけるように舌を出すとお決まりのように新羅がそれを優しく噛む。口を口で塞いで生温い息を交換して、一心同体どころか実体もなくなるぐらいどろどろに溶け合って混ざり合えばいいと容量限界まで熱を抱え込んだ脳が叫んだ。
身体の中に新羅がいる。ふざけた表現だ。しかもたいへん無益だ。でもこれが俺にも、たぶん新羅にも愉快で堪らない。
名前を呼べば返ってくる笑顔が俺はいっとう好きなのだ。
開けた放たれたままの教室のドアの向こうから闇が迫ってくる。喉の奥から洩れる喘ぎがやたらと反響している気がして息を殺そうしてみる。途端に膝の裏を舐められ、また高い声が出た。新羅のくすくす笑う声で頭は一杯になる。
明日は休みだからゆっくり眠ろう、二人で。
それだけを頭に残して俺はゆっくりと感覚の海に沈んでいった。